動脈瘤の治療方法(2)血管内治療
カテーテルによるコイル塞栓術(図4)
血管の中からカテーテルという細いチューブを動脈瘤の根元まで入れて、そこからコイルという金属(プラチナ性、MRI 可能) を送り込んで内部を埋めます。障害を残さず、安全に治療できる可能性は、 開頭手術と同じ程度です。この治療法の利点は、入院期間が短くてすむこと(通常、未破裂動脈瘤で3-4日)手術創が残らず、痛みもなくてすむこと、剃髪しなくてよいこと、高齢者でも可能なことなどがあげられます。マイナス面は、10-20%に動脈瘤が再出現し、再治療を必要とすること、(いったん血管内で治療した場合、開頭手術は困難です)動脈瘤の形状(間口が広いものや、分枝血管が動脈瘤よりから出ているものなど)によってはコイルによる治療ができないこと、カテーテル操作中に動脈瘤が破裂するケースが 約1%に見られ、この場合には止血困難で重篤になることが多いことなどがあげられます。日本では現在、動脈瘤手術の10-20%が、血管内手術です。
治療に対する考え方
未破裂脳動脈瘤が発見された時、個々の動脈瘤の生涯予測破裂率と治療の安全性のバランスによって治療を受けるかどうかを判断していただくことになります。当脳神経外科の方針は、クリッピング術の安全度が高いと判断される動脈瘤に対しては、生涯にわたって破裂を防ぐことのできるクリッピング手術をお勧めし、この手術の危険性が高いと判断される動脈瘤に対しては、血管内治療をお勧めしています。
脳ドック学会から 無症候性未破裂脳動脈瘤の治療指針がガイドラインとしてインターネット上で公開されています。
(http://www.snh.or.jp/jsbd/)
< 脳ドック学会による 無症候性未破裂脳動脈瘤の治療指針(2008年)>
未破裂脳動脈瘤の自然歴(破裂リスク)から考察すれば、原則として患者の余命が10~15年以上ある場合に、下記の病変について治療を検討することが推奨される。
- 大きさ5~7 mm以上の未破裂脳動脈瘤
- 上記未満であっても、
- 症候性の脳動脈瘤
- 後方循環,前交通動脈,および内頸動脈-後交通動脈部などの部位に存在する脳動脈瘤
- Dome/neck aspect比が大きい・不整形・ブレブを有するなどの形態的特徴をもつ脳動脈瘤