頸動脈狭窄症|昭和大学医学部 脳神経外科学教室 頸動脈狭窄症について

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頸動脈ステント留置術(CAS)

頸動脈ステント留置術:カテーテル治療

頸動脈ステント留置術は、カテーテルによる治療です。頚動脈狭窄症に対する治療は、手術、薬による治療などがありますが、近年、カテーテル治療が行われるようになってきました。治療件数も徐々に増加してきておりますが、まだ歴史の浅い治療法で、しっかりとした治療を行える専門医や病院が少ないのが現状です。新しい治療器具や新しいテクニックが年々登場してきており、進歩がめざましい分野であります。

頸動脈ステント留置術の治療方法

脚の付け根の血管からカテーテルを挿入し、首の血管まで進めていきます。そして、バルーンカテーテルと呼ばれる風船状の器具にて細くなった血管を広げます。その後、ステントと呼ばれる金属の網状の筒のような治療器具にて血管を広げます。さらにもう一度、バルーンにて血管を拡張させます。治療の際に、動脈硬化の破片が脳へ流れていくことがあり、その場合、脳梗塞に陥ることがあります。それを予防するべく、プロテクションという手技を用います。プロテクションとは、バルーンにて一時的に血流を遮断し動脈硬化の破片が脳へ流れて行かないようにしたり、フィルターと呼ばれる網状のもので流れていく動脈硬化の破片をキャッチします。治療は、痛みもほとんど無いため、局所麻酔にて行います。
当院では、Philips社製の最新鋭および最上級のアンギオ装置にて治療を行います。この装置は、日本国内にもまだ数台しか導入されていません(2013年4月現在)

血管造影:治療前 頚動脈が著しく狭くなっている
血管造影:治療前 頚動脈が著しく狭くなっている
血管造影:ステント治療後 内頚動脈の細くなっていた部分が拡張している
血管造影:ステント治療後 内頚動脈の細くなっていた部分が拡張している

頸動脈ステント留置術の長所と短所

この治療の長所は、手術とは異なり“切らずに治療ができる”ことで、首の皮膚を切る必要がありません。そのため、手術後に傷が残ったり、そこが化膿したり出血するといったことはありません。加えて、抗血小板薬(脳梗塞の予防薬)を手術前に中止する必要もありません。また、局所麻酔でも行えるため、心臓病や呼吸器疾患、高齢などにより全身麻酔が困難な方に対しても治療できます。
この治療にも欠点があります。治療を行った際に、動脈硬化病変が脳に流れるなどして脳の血管が詰まってしまい脳梗塞をきたすことがあります。その危険性は手術より高いとされています。この予防のために、先に述べたプロテクションや血を固まりにくくする薬(抗血小板薬)などを使用します。

治療成績

治療により合併症をきたすことがあります。一般的に、頸動脈ステント留置術にて脳梗塞をきたしたり死亡する確率が3-10%程度とされています。
奥村が2006-2012年の7年間に治療を試みた連続83件の頸動脈ステント留置術において、全例治療が行えております。治療後数日以内は症状を来した患者さんもおられますが、治療手技による合併症にて症状が永続的に残存したり、死亡された方は一人もおられませんでした。再治療を行った方も一人おられませんでした。しかし、一般的にはリスクが低くない治療であるということを忘れてはならず、治療を行うかどうか慎重に検討しなければいけません。

手術とカテーテル治療、どちらが良いのか?

手術、カテーテル治療とも一長一短で、それぞれ得手不得手がありますが、基本的に、頸動脈ステント留置術が対象となるのは手術(CEA)が困難な方です。狭窄性病変の位置や性状、年齢、他に患っておられる病気などを熟慮し、治療方針を検討することが重要です。
このように、手術とカテーテル治療のどちらが良いか決定するには、様々な要素が関与していますので、患者さんごとに熟考することが必要で、それぞれのエキスパートが相談できる環境が望ましいと考えています。

これから始める人のための頸動脈ステント留置術(中山書店)
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合併症例から学ぶ脳神経血管内治療 -ピットフォールの回避と、合併症への的確な対応-(メディカ出版)
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奥村が共著しております。